ケース集

自治体CLO

 自治体が地元中小企業を支援する場合、制度融資などの方法により直接資金を供給する 場合もありますが、これは自治体が中小企業の市場調達を仲介する方法にあたります。 CLO(Collateralized Loan Obligation)とはローン債権をプールしそれを裏付け資産とし て証券化した商品のことです。

 平成12年に東京都が初めて実施した後、福岡県、大阪府、大阪市等いくつかの自治体 単独で組成された。その後首都圏や中部圏で複数の自治体にまたがって実施するものや、 宮城県・和歌山県・鳥取県・佐賀県といった地理的にも離れた自治体で組成されたもの も登場しています。

ご当地ファンド

 地域で集めたお金に還元するのは地域で使おうといった趣旨で設立されたファンドの ことです。特定の都道府県、あるいは地域に本社や工場をおく企業の株式を中心に投資 します。平成14年ごろから販売され始め、今では数十のファンドが設立されており、 用途が明確であることから地域住民の人気を得ています。株式だけでなく、債券(兵庫県 ののじぎく債等)や不動産投資信託(福岡REIT等)の形をとるものもあります。

天候デリバティブ

 冷夏、長雨、暖冬、豪雨などの気象変動は、企業の損益に大きな影響をもたらします。 例えばゴルフ場や遊園地などは、降雨、積雪、多雨、猛暑などの際には閉鎖や来場者数 の減少により収入が減少、また海の家やビアガーデンなどは、冷夏の影響により売り上 げが減少します。天候デリバティブは従来、避けられないリスクとして考えられていた 気象リスクを軽減し、収入を安定するために生まれた金融派生商品です。

 天候デリバティブは、買い手が一定額のプレミアムを支払い、気温、降水日数、積雪量、 風速など様々な気象データを指標として契約を行うことで、事前の取決め数値を上回れば 自動的に補償額が支払われます。損害保険と異なり実際の損失の有無は問われません。

コンティンジェント・デット

 災害が発生したときに借入を可能とするオプションであり、災害等非常時の際には免責と なるコミットメント・ラインとはその点で異なっています。借入時の金利あるいはリスク プレミアムを定め、契約時にオプション料であるローン予約料を支払うことで契約が成立 します。予め保険料を支払い災害時に保険料が支払われる保険契約と似ていますが、ローン であるので後日返済が必要で災害復旧資金の確保のために使われるものです。静岡県に工場 を構える(株)巴川製紙所が平成16年に日本ではじめて導入しました。

ファイナイト保険

 大数の法則が効かない特殊なリスクも時間軸上にリスクを分散することで保険化が図られ ます。ファイナイト保険は、企業と保険会社がリスクシェアリングすることで、保険会社に 情報の乏しいリスクについても保険化が可能となるものです。

 ところで土壌汚染をカバーする保険(例えば「環境賠償責任保険」)は保険会社と契約者の 間の情報の非対称性があるため殆ど使われることはなく、仮に付保できたとしても高額の事 前調査費と保険料が要求されます。こうしたなかで、シナネンの山形と盛岡に所在する石油 備蓄施設において石油漏洩事故が発生しました。そこで同社は地域住民・自治体や投資家に 対する安全体制面での信頼回復を目的に、一般企業では初めてファイナイト保険を導入しま した。

デット・エクイティ・スワップ(Debt Equity Swap)

 債権者が債務者に対して有する債権を株式に転換する事業再生手法で、“債務の株式化” ともいわれます。銀行の債権放棄に比較して、抵抗感が少なくスピーディーな再生処理が 期待されます。

 売上減少や過剰投資で債務超過に陥った企業は、株主となったメインバンクや事業再生 ファンドの強力なリーダーシップのもとで、思い切ったリストラや会社分割等を断行して 事業再生を図ることになります。デット・デット・スワップ(通常債務の劣後債務化)と 並んで、企業規模の大小を問わずその再生に多用されています。

ABL(Asset Backed Lending)

 企業が不動産以外の動産(在庫や機械設備等)・債権(売掛金)などの流動性の高い資産 を担保として借入を行う方式です。金融機関は在庫の市場性や売掛先の支払能力に基づ いて担保評価を行って貸出枠を設定し、企業はその枠内で融資を受けることができます。 この貸出取引スキームを継続していくには、企業は定期的に在庫や売掛金状況を金融機 関に報告するなど、継続的に情報を共有するためのルール(外部専門評価会社の活用や ICタグの利用等)が設定されます。

 鹿児島県の地域金融機関の中には、産業集積群(アグリクラスター)構想にABLを金融 ツールとして活用し、アジアを見据えた地域の農商工連携と、アグリベンチャーの創業 支援を実施している例もあります。