ケース開発
CASE DEVELOPMENT

本プログラムは、基本的に座学+ケーススタディで授業を進めます。
本プログラムの新設4科目(「地域包括ケアと医療経営」「ソーシャルマネジメント」「医療機関事業承継」「医療機関事例研究」)で取り扱うケースの概要は以下のとおりです。

医療機関事例研究

自由診療を主たるサービスとするレディスクリニックの開業

晩婚化・晩産化による不妊の深刻化で、年々市場が拡大する不妊産業。一方、不妊産業は不妊治療技術パッケージ化の進展や不妊治療専門医の社会的地位の確立で、都心部を中心にレディスクリニックの競争環境は激化している。そうしたなかで、産婦人科医療、周産期医療に興味を持ち、元々開業意欲のあった医師が、米国および日本において25年間にわたり産婦人科診療と不妊症治療の実施経験を元にして、自由診療である高度生殖補助医療を主たる事業とするレディスクリニックを開業するケースをとりあげる。
院長の「最先端の生殖医療と身体と心との両面での癒しの適合を実現する統合的診療」というミッションを果たすために当初からレディス総合医療路線で進めた結果、開業費用が大きく膨らみ、しかも集患の当初の思惑が外れ開業は厳しい船出となった。また、開業当初から課題であった人材の確保と定着のための組織・人材管理をはじめ、競争環境を勝ち抜くための自由診療サービスの価格戦略と患者ターゲット、そして人件費とスタッフの就労負担の軽減を目指した夜間診療の廃止ならびに患者満足度向上および集患のために取り組んだ内容を紹介する。
本ケースでは、開業時の投資の判断の妥当性、夜間診療廃止による医療サービスの品質と患者満足度、スタッフ管理についてディスカッションする。

医療と介護の融合サービスを目指す診療所の事業の多角化における組織管理と患者満足度・集患

60年前に人口密度が高い都心部に開業した診療所が開業43年目で親子承継を行い、事業承継後に、介護分野に進出して地域密着型の医療と介護の融合サービスを展開する診療所の多角化のケースをとりあげる。診療所の老朽化により、近隣の所有地に自社ビルを建てクリニックを移設。現在、認知症予備軍である高齢患者中心の診療所の他に、ケアプランセンター、訪問リハビリ、一般型デイサービス、認知症対応デイサービスの4つの介護事業所を併設している。事業の多角化でスタッフに対して院長の目が行き届かなくなり、現在、専任の事務長を置き、医療と介護の現場管理を一手に引き受けるが、医師は今も院長一人で対応している。介護事業所の複数併設により一時は、事業所が3拠点に分散するも、事業の生産性と効率性の向上を図るために事業拠点を新築の「クリニックビル」と旧診療所を改装した「ケアビル」の2拠点に集約する。また、医療と介護の融合サービス提供を提供するために電子カルテの導入はじめITを導入して医療スタッフと介護スタッフの相互交流と情報の共有化を図り、組織の活性化と人材育成に取り組んでいる。また、患者満足度向上と地域密着型の訴求を高めるために、抗加齢サービスを提供するパワーリハビリテーションマシンを設置するスタジオをクリニックビルの一階に開設しクリニックの休診日は住民にも開放している。慢性的疾患を抱える患者が8割近くを占めるなかで、今後の事業の方向性としては、認知症の治療への特化とデイサービスとの連動を強化し、現在の患者を「医療から介護へ」とトータルサービスを提供する体制を考えている。
本ケースでは、事業の多角化による医療人材と介護人材の確保とバランス管理、中間管理職の育成という人材戦略と今後の集患戦略を中心にディスカッションする。

在宅医療支援『おひさまシステム』 ~多職種連携を推進するクリニック発のICT化と患者情報管理システム~

在宅医療に特化した医療法人おひさま会やまぐちクリニック(兵庫県神戸市垂水区)が2006年に開業した。2006年は、厚生労働省が在宅医療を制度化した年である。医療法人おひさま会は、在宅療養支援診療所の開設、運営維持、地域医療介護連携体制の構築・維持などに取り組み、現在ではやまぐちクリニックのほか、おひさまクリニック西宮(西宮市)、おひさまクリニック(神奈川県足柄上群)、おひさまクリニック湘南(神奈川県茅ケ崎市)、おひさまクリニック青葉台(神奈川県横浜市)の5診療所で構成されている。グループ全体で2,000人程度の医学管理を行い、看取り数は年間300件に上る。同クリニックでは、在宅医療診療所向け支援サービス「おひさまネットワーク」を運営している。FileMakerで構築された『おひさまシステム』も同社が開発し、運用を行っている。これからは在宅医療・介護における多職種のスタッフ間の連携が重要となることから、それを円滑に進めるためにと独自に開発されたシステムである。
本ケースでは、医療法人おひさま会がいち早くICT化に取り組み、在宅医療支援『おひさまシステム』を確立させた経緯に着目する。市場の状況としては、多死時代、需要に対して供給が全然足りていない状況であるといえる。参入を希望するプレイヤーも多かった中にありながら、山口氏は高効率な医療提供システムにより医師の報酬アップで医師を確保し、診療そのものではなく、サポートシステムを使って規模型を目指すとしている。当法人のシステム導入の考え方、成果と今後の課題についてまとめていく。