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プロジェクト活用科目
 今日の複雑でダイナミックな経営環境のなかで、企業組織を戦略的にマネジメントするためには、分析的・論理的思考と、創造的な問題解決のための判断力・洞察力が必要とされます。そのような実践的な能力を養うために、「専門職大学院等教育推進プログラム」で得られた研究成果は、以下の科目等で活用されます。
アントレプレナーシップ
 経済・社会の発展にとって、アントレプレナー(起業家)が果たす役割には非常に大きなものがあります。すなわち起業家が新たなビジネスを創成し、これまで社会になかった価値(商品・技術・サービス)を創造することによって、新たな生産活動や生活様式が生まれます。
 デパ地下でのお洒落な総菜店RF1(アール・エフ・ワン)を経営している(株)ロック・フィールドは、起業家・岩田弘三氏によって1972年に設立されました。同社は、女性の社会進出、食の安全・安心、健康、環境配慮などの社会の大きな流れをいち早く感知して事業を起こし、そのビジネスモデルを変容して成長を続けています。岩田弘三氏の生い立ち、創業プロセス、そして企業成長のプロセスをケーススタディすることによって、アントレプレナーシップ(起業家活動)の真髄を学ぶことができます。
 京都市に本社をおく竃x場製作所は、自動車排ガス測定器、医療用計測器、半導体製造測定器や各種分析機を開発、製造、販売するグローバル企業です。創始者の堀場雅夫氏は戦後の大学発ベンチャーの草分けであり、「おもしろおかしく」の社是を制定するなど、独創的な企業家として有名です。堀場氏の技術者、研究者としての側面と経営者の側面を学ぶことによって、現代企業家の戦略的役割について考察します。
経営戦略
 「経営戦略」では、シャープの「TFT液晶の事業化」のケースについて、辻晴雄元社長へのインタビュー・データ等をもとに、クラスでディスカッションしました。1986年、社長に就任した辻氏は、デバイス事業の柱となる事業としてTFT液晶を選びます。その決断に至った経緯や、TFT液晶を様々な応用商品を通じて育成したプロセスを分析し、「大きな構想を実現するには何が鍵になるのか」について議論しました。
 講義では、辻氏をはじめ、TFT液晶の育成に関わったシャープの方々へのインタビュー・データを引用しながら、重要と考えられるいくつかのエピソードについてお話しました。また、世界初の14型サイズを実現したTFTカラー液晶パネルなど、トップが本格的な投資を決断するきっかけとなった試作品や、その決定によって設立されたTFT液晶の量産工場の写真等を紹介しました。実際の意思決定に関わった方々のインタビュー・データやビジュアル・データを用いることで、ケースについて臨場感を持ってクラス・ディスカッションできたように思います。
経営戦略事例研究
 現代の経営戦略の本質は、経営者がいかにイノベーティブな環境を整備するかにかかっていると考えています。イノベーションは常識的なものではありません。むしろ、異端、異質の中からイノベーションが生まれます。戦略スタッフが「論理的」にイノベーションを起こすのではなく、経営トップの戦略を実際に実行する試行錯誤の過程で、現場からイノベーションが生まれてくるのが実態であり、諸外国でも戦略の実行プロセスに注目する学者が増えています。その意味で、経営者が如何にイノベーティブな環境整備に腐心しているかを学んでいただきたいと思い、経営者の話をじかに聞く機会をできるだけ多く作るようにしています。
 2007年度は、シャープの辻相談役、利昌工業の利倉社長、トヨタの浦西副社長から実体験に基づく話しをしてもらい、事例研究の材料にしました。普通のおじさんが、いったん経営の話を始めると、いかに日々「危機感」にさいなまれて苦労しているかを知り、危機感を乗り超えるためにいかに苦悩し、忍耐強く社員を説得しているかという迫力に圧倒され、オーラすら感じたという感想が私のもとに寄せられています。現代は「革新的経営者の時代」です。
企業家論
 本講義は、企業家と企業家活動に関する理論や研究動向を学んだ上で、日本の経営革新において重要な役割を果たしてきた企業家の事例を取り上げて、その経営理念と戦略、意思決定、経営行動など、企業者職能を総合的に学ぶことを目的としています。参考資料としては、論文・著書、会社史、伝記のほか、現実の企業家にインタビューすることによって研究素材を得る方法、すなわち「オーラル・ヒストリー」も重要な役割を果たします。インタビューから、企業家の方々の熱気、志、人柄など、文献資料では得られない臨場感、迫力が伝わってくるからです。今回のプログラムが企業家へのインタビュー記録を映像の形態で残したのは、この臨場感をIBAの学生諸君にも実感して欲しいと思ったからです。
 さて、私は阪神電気鉄道の前社長(現相談役)の西川恭爾氏のインタビューを行いました。阪神電鉄は、従来、保守的な鉄道会社と見られてきましたが、ここ20年においては西梅田開発、西大阪線の延伸、タイガースやビルボードライブなどのコンテンツビジネスの強化など積極戦略に転じ、在阪5私鉄のなかでも優良な経営成果を示してきましたし、何よりも近年の「村上ファンド」事件で世間の耳目を集めました。西川氏からは、技術畑の経営者として中心的役割を果たされた西梅田開発事業と西大阪線延伸事業の構想、経過をつぶさにお聴きすることができ、今日の私鉄におけるストック型ビジネスからフロー型ビジネスへの転換の事情を理解することができました。社長として衝にあたられた村上ファンド事件から阪急との統合問題については、残念ながら詳しいお話をお聴きすることはできませんでしたが、洩らされた当事者としての感慨には感銘を受けました。また併行して、阪神タイガース会長・オーナー宮崎恒彰氏にインタビューを行い、タイガースの球団経営の実情、経営戦略、そしてタイガースの選手たちのお話などを伺えたことも楽しい経験でした。これらの成果は、本講義においてケースとして活用していく予定です。
製品開発事例研究
 「製品開発事例研究」では、企業の経営活動の中での商品開発を対象にしています。経営トップの構想する経営戦略の成否は、その戦略目標を如何にして実現していくか、それを如何にしてラインレベルまで貫徹させていくかにかかっています。
 この講義では、シャープの辻相談役がプラザ合意後の難局を乗り切るために採った経営革新施策と、それが今日のシャープの液晶の時代を切り開いて行く過程の中で、氏の示した稀有な経営者像を商品開発に焦点を当てて取り上げています。液晶というデバイスに注目し、これを将来の重点事業として取り上げたことと同時に、その実現のために自ら液晶応用商品の開発を社内に鼓舞して回り社内に液晶応用の商品作りの風土を作りあげていったその姿は、まさしく現場まで届く経営者魂そのものでした。
 受講生達が、ケース教材『液晶応用商品開発にみる辻氏の経営』の活用により、過去スパイラル戦略、垂直統合といった通り一辺の言葉で語られる液晶戦略の実態について、その真の姿を学べたのは有意義でありました。
流通システム
 流通システムでは、商業の変遷やメーカーの役割の変化、商業政策について講義をしています。その中でも商業の変化は、中心的な課題であり、主な小売業態の変遷や卸売商の近代化、物流技術の革新などを大きなテーマとしています。
 教育推進プログラムでは、大丸の奥田会長を取り上げ、その中でも出店戦略についてケースとして取り上げています。特に標準化した店舗管理とそれに見合った店舗のハードウェアの設計という従来の百貨店では出来なかった手法を導入したことで、百貨店の出店戦略にどの様な変化が生まれたのかを検証しています。
 奥田会長のインタビューの中からは、特に梅田店の出店での経験や札幌店の出店の意思決定に際して、どのポイントに重点を置いたのかをビデオとケースで紹介しています。学生は、ケースで紹介された内容を奥田会長自身の言葉で再確認することでその意思決定におけるニュアンスを理解し、その過程を知ることができるでしょう。「大丸札幌店の出店」はその意味で大変重要なケースであり、この講義での活用は有意義なものとなりました。