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企業家コラム
VOL2.変わりゆく資本市場と望まれる経営者像
 MAC アセットマネージメント(通称、村上ファンド)が世間を賑わしてから数年の月日が流れ、敵対的企業買収の波も収まったかに見える。村上世彰氏はインサイダー疑惑で逮捕され、買収ブームは一過性のものだったと考える人もいるかもしれない。しかし、村上ファンドの興亡に象徴される日本の資本市場の変貌には、表面的な数字では捉えきれない、質的にドラスティックなものがある。考えてみれば90年代には企業価値の定義さえあいまいであった。しかし現在では企業価値=株主価値であり、株主価値の最大化が声高に叫ばれ、公開企業である限り、株価を気にしない経営者はいないだろう。今のところまだ日本での成功事例は少ないものの、今後は敵対的買収の嵐が吹き荒れ、株価を上げることができない経営者の首が簡単にすげ替えられるような時代が到来するかもしれない。阪神電鉄元社長の西川恭爾氏(現阪神電鉄相談役)のインタビューからは、このように時代が大きく変化しようとしている過渡期に遭遇した経営者の困惑を感じ取ることができた。「まじめに、顧客を大切にし、従業員のことを考え、借金を減らす努力してきた経営者が、なぜ責められなければならないのか」という怒りを含んだ困惑である。
 一方、オリックスの宮内義彦会長は真反対である。株主価値最大化こそ正義であるとの米国流経営を日本人の感性に合致するようにうまく応用している。いち早く米国市場に上場するなど非常に米国指向が強く、自著でも「日本は米国を目指して歩め」とまで語っているが、米国の金融会社のようなドライな人事を行うわけではない。今では、欧米のみならず中東地域へと貪欲にビジネスチャンスを模索しながら、日本社会に苦言を呈する経営者である。国際的金融総合会社のオリックスと、公共性の強い鉄道事業会社の阪神電鉄の経営者を比較するのは乱暴であろうが、私が会った2人の経営者は、いわば両極端にある経営者のアーキタイプかもしれない。
 これからの日本はどちらに向かうのだろうか。米国流の経営を推し進めるのか、持ち合いを強化して古きステークホールダー重視の日本的経営に戻るのか。いずれの道を選択しても副作用は免れないだろう。二人の経営者にインタビューしながら、その向こうに分かれ道が見えてきた。
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