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企業家コラム
VOL5.企業革命に立ち向かう企業家奥田大丸会長と井上ダイキン会長の共通点
 窮地に立った企業のトップに就任すると言うことはそれだけで大きなプレッシャーであろう。今回のプロジェクトで3名の企業家へのインタビューを担当したが、株式会社大丸の奥田務会長、ダイキン工業株式会社の井上礼之会長ともに企業業績が必ずしも順調でない中での就任であった。
 双方の企業ともに従来の事業戦略が行き詰まりを見せ、抜本的な企業の変革が求められていた。創業家のトップに代わって社長に就任したというのも、その経緯は同じである。また、海外店舗にいた奥田氏と人事畑にいた井上氏ともに、必ずしも花形の部署を歩いていたわけではない。就任して直ぐに「変革」に取りかかったのも同様で、不採算部門を処分し、本業を立て直すために粘り強く改革を進めて、大胆な組織変革を行ったことも良く似ている。
 業種も出自も異なるこの二つの企業のトップが同じ方向で意思決定をしていることは、この15年間の日本企業の置かれてきた状況を的確に示していると言って良い。問題は、これらの手を打つことが出来た二人の経営者の手腕を、個人の力量としてどこまで評価するかと言うことである。
 外部から見ると「衆議独裁」を掲げて、人を中心とした経営を標榜する井上会長と海外留学の経験もあり一見ドライな奥田会長とは対比的に見られるかもしれない。ところが、そこで打った手は大きく違ってはいない。大丸ではリストラを行い希望退職を募ったが、人を減らさずに市場の拡大を模索したダイキンとの違いは、将来の市場への見方の違いと言っても良いだろう。
 ただ一点、この二人の違いと言えば、奥田会長が企業風土や文化の刷新を唱えたのに対して、井上会長はダイキンの風土の変革を求めることを表向きに表明したわけではないと言うことである。大丸では人事制度が大きく変化し、業績連動給与が導入されたり、年功序列が撤廃されている。ダイキンでは、数字で上がってくる人事評価をそれほど重視するわけではない。こうした違いは、やはり二人の個性と経験の違いが反映しているように思える。
 私たちは、業績が高まっている企業を評価する場合に何でも上手く行っていると考えがちであるが、お二人のインタビューからは将来の問題でも共通したいくつかの話題が出てきた。それは、業界の再編成であり次代の人材育成であり、企業のガバナンスの方法であった。井上会長はグローバル化した現在の企業の新たなガバナンスの形を模索している点に言及し、奥田会長は海外店の撤退によって将来の人材養成の場を新たに確保する点について懸念を示した。
 先に人事や組織を変革して将来に備える大丸と、先に企業がグローバル化する中で新たなガバナンスを模索するダイキンのこれからの戦略は、様々な意味で興味深い。これだけの業績を上げた企業家の後継者には、これらの問題を解決できる人が選ばれるとともに新しい課題にチャレンジできる人と言うことになるのだろう
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