女性活躍推進研究センター

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労務学会第48回全国大会(7月1日)で研究員の奥野とセンター長の大内が研究報告をしました 。

2018.07.20     研究


タイトルは「復職者の人事評価に関する2つの問題」です。1日朝の第一報告で、9時半からのスタートにもかかわらず、多くの聴講者がありました。中央大学・佐藤博樹先生からは、「復職直後には能力が低下し、評価が一時的に下がるのは仕方がないのではないか。問題は、その後、中長期的に能力が回復、上昇しするのに対して、評価が伴っているかどうかではないか」というご指摘をいただきました。コメンテータの同志社大学・浦坂純子先生やその他フロアの方からも有意義な質問やコメントをいただき、Conference Presentation今後広がりと深まりのある研究だと、とても勇気づけられました。


【報告要旨】

筆者たち(奥野・大内)は、先行研究のサーベイから、産休・育休からの復職者の評価について鍵となる2つの問題を発見した。本報告では、それらを「二重の削減問題」と「仕事の配分問題」と呼ぶ。前者は、短時間勤務者について、勤務時間の削減に比例した基本給の減額に加え、短時間勤務であることによる低い人事評価結果によって基本給以外の賃金部分にも減額が生じることである。後者は、復職者には質の低い仕事が配分される傾向にあるという問題である。前者を防ぐために目標レベルの下方修正が行われることがある。しかし、それは、高い目標達成度と低い組織貢献度というパラドックスを発生させる。このパラドックスのため、復職者の人事評価制度の納得度は低いことが推測される。本稿前半では、まず、この点を理論的に示す。後半では復職者の人事評価への納得度と復職者に配分される仕事の特徴を明らかにするために筆者たちが行った調査を分析する。復職前後の人事評価の結果や、それに対する納得度には一定の傾向があるとはいえないが、自身の人事評価結果に対する復職者の不満やあきらめの声を見過ごしてはならない。2つのケースからは、休職前後で、トラブルや緊急事態への対応が減った一方で、代用がみつかる容易な業務が増加していた。復職者の職務配分については、本人の希望に応じるだけではなく、中長期的な育成への考慮が必要である。