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シンポジウムレポート1
参加者からのQ&A
Q 1.
オーラル・ヒストリーと小説はどのように違って、
どこで線引きをしたらよいのかご提案頂きたい。
A 1-1. 松島茂(法政大学教授)
  私は、区分けや呼び方はあまり重要と思っておらず、大切なのはシンパシーを持つことだと思います。嘘というのはぐっとこないので、ぐっとくる話を出来るだけ伺って、その為に一生懸命努力するのに意味があると思います。
A 1-2. 尾高煌之助(一橋大学名誉教授)
  オーラル・ヒストリーは小説ではないと思います。私は歴史資料の一部として使ってもらうためにやっています。小説は小説家が自分のメッセージを伝えるために、オーラル・ヒストリーは語って下さる方を材料にして作るのですから。
A 1-3. 宮本又郎(関西学院大学教授)
  研究者の場合は、聞いた話の裏付けが別にとれるかの調査も必要ですし、また、研究の一番大事な所はニュースソースを明らかにしないといけないということですね。小説家やジャーナリストには必要ないですから。
 
Q 2.
繊維会社関係では、大屋さん以外の日清紡の桜田武さん、東洋紡の宇野収さん、クラレの大原総一郎さんなど、印象に残っておられる社長さんをご紹介頂きたい。
A 2-1. 文箭安雄(日本ベンチャー キャピタル株式会社代表取締役会長)
  クラレの大原総一郎さんはバランスシートで会社を評価しては駄目で、未来の新製品を作る為に健全な赤字を持っている会社は将来性があるということと、人と人との繋がりという人脈によって新しい発展のきっかけをつかむとおっしゃっています。
日清紡の桜田さんとはお会いした事はありませんが、その後の人に会うと、社名と実際は違いますとのことです。東洋紡にしろ、日清紡、クラレも、全然違う仕事をしています。そしてなぜか優良企業ほど東京へ行ってしまっています。かなり看板と内容は変わっているのでその辺を注意して見ないと、企業を見る目に間違いが起こってくると思います。
 
Q 3.
今までは日本人の心をもって成功された方が多いと思うが、今からはトップダウンでやるような仕組みがどんどん作られつつあると感じる。
A 3-1. 山本昭二(関西学院大学教授)
 

大丸の奥田会長も、「グローバル化をしないといけない、意思決定を早くしないといけない」と語られる一方で、「リストラなどのアングロサクソン流のドライな経営には付いていけない」ともおっしゃっていました。でも、特に優秀な企業は日米で違うかというと、そうでもないのです。優秀な経営者を排出する企業として有名なGEでは、代々の社長は内部昇進です。そういう意味では、標準化やグローバル化が進んだ時に、日本人らしさとか日本的な企業がどこに残るかと言うと、やはり良い企業の中に残っていくと思います。

 
Q 4.
先程文箭さんがおっしゃった事と山本先生がおっしゃった事に関連して質問したいが、今後は猜疑心の世界だとすると、相互信頼に成り立つ共同体意識を保持していくのは難しいのではないか?
A 4-1. 文箭安雄(日本ベンチャー キャピタル会長)
 

トヨタ自動車のような日本式経営は残っていくと思います。ただ、ベンチャービジネスを立ち上げている人は、マーケットを見て仕事をするような形に変わってきています。トップダウンの命令一下のところではやりたくないと。そういう人の集団と絶対トヨタ一色主義の集団と、どちらが今後の世界で生き残るのか、と言うことになると、まだ答えは出ていないと思いますね。

 
Q 5.
最近、関西から企業家が出ていない気がするが、今後増やしていくためには、関西として何をすべきなのか、あるいは逆に関西という視点を捨ててしまうべきなのか、ご意見を頂きたい。
A 5-1. 角田隆太郎(名古屋市立大学教授)
 

10年位前に、京都で堀場製作所の堀場さんから企業家をどんどん出す方策を考えてくれと依頼されたのですが、その時に、企業家を育てるには、暖かく支援し守り育てる母親役と、経済原理で成功者には高い報酬で報い、成果の出せない人にはペナルティあるいは淘汰を迫る父親役が必要と考えました。世の中の多くの仕組みはこの二役が連携していないんです。例えば、経済原理を貫徹するには株式会社にして市場原理に任せるのがいいのですが、暖かく守り育てるには財団法人やNPOのように収益を第一義には考えない組織が必要です。この2つを有機的にかみ合わせるのが、企業家育成の一番難しいところです。京都では、この2つを使い分ける仕組みができないか堀場さん達といろいろ考えて、京都市のプラットフォーム事業を作り、それなりの成果がそろそろ出かけています。
大阪の場合は、都市や経済の規模が大きいこともあって、堀場さんのような政治、行政、経済界をまとめる人がいないように思います。政治、行政、経済をひとつにまとめることのできる(塩爺のような)リーダーが大阪には必要なのではないかという気がします。

A 5-2. 文箭安雄(日本ベンチャー キャピタル会長)
 

14年前に、ウシオ電機の牛尾君から、今後の日本の大きな課題はベンチャービジネスの育成だと言われました。1980年のアメリカの不況を突破した力は、シリコンバレーを中心としたベンチャー企業が育ったからだが、日本には「将来性がある業種で、経営者もしっかりして技術もいいが、担保がない会社」に投資する本格的なベンチャーキャピタルがない。そこで我々が実践的なベンチャーに投資しようと今の会社を始め、資本調達や営業協力をして、ベンチャーの育成をしています。
残念なのは、首都圏にベンチャーが集中して、関西、京都では合わせても12%位が現状ですね。ただ、そういう人がどんどん出てきているので、日本の将来は明るいと思っています。しかし、日本では大企業に経営資源が集中しています。日本の特徴を生かすなら、大企業とベンチャービジネスの融合も今後のひとつの方法ではないでしょうか。アメリカシリコン型のベンチャー育成ではなく日本式のやり方もあると思い、ビジネス・アライアンス会議を設置して、その成果もぼつぼつ出ているところです。

 
  宮本又郎(関西学院大学教授)
  皆さん、どうも有り難うございました。
 
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